タワーマンション購入で相続税対策はもうできない⁉︎路線価評価が否認され不動産鑑定評価を是とする判例

路線価による不動産評価が否認された事例

令和2年6月24日、東京高裁にて「控訴棄却。納税者敗訴」の判決がなされました。

これは、令和元年8月27日の東京地裁判決の結論を是認したものです。

問題となった事例は、下記のとおりです。

面白いのは、相続税還付申告の事例とは逆に、「税務署が不動産鑑定評価額を用いている」点で、さらに、税務署自らが作成している「路線価」を否認しているかのように報じられたところです。

地裁の判決が出た当時は、「相続税対策の限界か?東京地裁、路線価による不動産評価を否認」という記事が出たり、「節度がない不合理な相続税対策は否認されるリスクがあります」といったコメントが税理士事務所さんのホームページに記載されたりしました。

まあ、細かい税法上の規定や財産評価通達について詳しく説明しませんが、パッと見て、鑑定評価額で財産評価をするのが正しいように見えますよね。

課税庁は、上記の考えに基づいて、いわゆるタワーマンションに対する相続税の評価を厳しくしているのはご存じの通りです。

 

1.相続財産評価の原則と例外

一時期、タワーマンションを使った相続税対策、いわゆる「タワマン節税」が富裕層の間でブームになりました。

マンション分譲業者がパンフレットに記載して、タワーマンションの購入意欲を掻き立てたものですが、これは相続財産評価の原則を利用したもので、路線価や固定資産税評価額をベースに所有者の持ち分割合を掛けて相続税評価額を算出する、いわゆる路線価方式」による評価です。

(この路線価は、毎年国税庁が定めて公表しています。)

この評価方法によると、当時は、同じ面積の部屋であれば、同じマンション内の1階の部屋も60階の部屋も同じ評価額となっていました。

(※現在では、階層による補正が行われていますが、それも実勢を反映しいるとはとても思えないような緩やかな補正に留まっています)

 

一方で、皆様ご存じの通り、同じタワーマンションでも、高層階は眺望やプライオリティから販売価格も高く、その後も時価は中々下落しないのとは逆に、低層階は販売価格は低いものの、眺望は低く、プライオリティも低く、その後の時価も下落しがちです。

(賃貸にした場合の家賃でさえ、高層階が高く、低層階が低いですよね?)

このように、タワー マンションの価値が高く・落ちにくい高層住戸を買って、路線価方式で評価した低い評価額で相続税申告することにより、大きな節税ができる」というのがタワマン節税の仕組みです。

 

しかしながら、相続税財産評価においては、例外が定められており、それが「時価」評価です。

すなわち、

原則の「路線価方式」で評価することが、「著しく不適当」な場合、「時価」によること

と定められているのです。

 

この例外規定を使って、国税局が自ら定めた原則の「路線価方式」での評価を否認して、不動産鑑定評価に基づく「時価」での評価を基準に課税するという異例の主張が認められたというのが上記の判例のポイントです。

 

2.どんな場合にタワマン節税って否認される?

実は、どのような場合が「著しく不適当」な場合で、「時価」によるべきかは、明文化されていません。したがって、冒頭のような裁判になる例が少なくありません。

しかし、冒頭の裁判例や他の判例から、裁判所・税務署の考えを推察すると、

  • 60m(20階以上)のマンションが対象になりやすい(しかし、タワーマンションに限りません)
  • 被相続人の死亡直前に相続人が被相続人名義で対象マンションを購入している(相続前3年以内が一つの目安のようです)
  • 購入時点で被相続人に認知症の疑いがあった等(被相続人から委任状を受けて、相続人が購入した場合、疑いが強くなるようです。
  • 相続開始後すぐに対象不動産を売却している(売却していなくても多額の借入金がある場合も調査の対象となる)
  • 売却額が購入額と比べほとんど下落していない

など、一連の行為を見て判断しているようです。

冒頭の事例では、税務署側が、銀行から「貸出稟議書」を証拠として入手し、対象タワーマンションの購入のためのローンの目的が「近い将来発生する相続税の減額」であるとの記載を指摘しています。(裁判では、そこまで追求されます)

 

3.それでも、なお有効なタワーマンションによる相続税対策

平成29年税制改正により、タワーマンションに対する固定資産税の計算方法が変わり、上層階が高く低層階が低く評価される制度も導入され、タワーマンションによる相続税対策は効果がなくなってきたのか、とよく聞かれます。

しかし、タワーマンションによる節税効果は以下のような理由により未だ有効です。すなわち、同じ額を現金で持つよりかははるかに有効なのです。

  • 前述の平成29年税制改正により、タワーマンションに対する固定資産税の計算方法の変更は、高層階と低層階でせいぜい±5~7%程度であり、軽微な影響にとどまってます。したがって、高層階の優位性は未だ存続しています。
  • 一戸建てと比べ、マンションはその所有者全員で土地の持ち分を分けるため、同じ地積であればマンションの方が土地の評価額が低くなる。すなわち、マンション全体の階数や部屋数が多くなればなるほど、一戸の持ち分は減り、相続税評価額は低くなるのです。
  • マンションを他人に賃貸している場合だと、その敷地部分は貸家建付地、建物部分は貸家として評価することになるので、相続税の評価上はさらに有利となります。
  • 一定の要件を満たすと投資用不動産でも土地の相続税評価額を最大50%減額できる「小規模宅地等の特例」という制度がありますから、タワーマンションの土地の相続税評価額はかなりの確率で低くなりやすいです。
  • 総じて、現金の評価より建物の評価が高くなることはないため、相続税の節税効果があることに変わりはありません。

 

税務署に否認されない相続税対策をするには

しかし課税庁は、税法や税務当局の通達が当初想定していなかった悪質な租税回避行為を摘発して、課税の公平を確保する立場を強化しており、タワーマンション等については、租税回避行為と認定される可能性が高まっていることは事実です。

先ほど述べた、課税庁の判断からすると、

  • 被相続人が元気なうちに(少なくとも入院していないこと!)
  • 被相続人自身でタワーマンションを購入し
  • 相続した不動産は相続税申告後しばらく経つまでは売却しない

ことにより、まずはタワーマンションによる相続税対策は否認される可能性が低くなると考えられます。

しかし、やはり「時価」と乖離する単純な「路線価方式」による評価額で申告すると、後の税務調査によって、更正処分がなされるリスクは常にあると思って下さい。

したがって、相続財産の中にタワーマンションや都心の高価なマンションが含まれている場合には、事前に

  • 相続に強い不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、適正な時価を把握し、相続税申告を行う。
  • 相続に不慣れな顧問税理士や知り合いの税理士のみに頼るのではなく、「不動産に精通した税理士」からセカンドオピニオンを取る。
  • 不動産と相続に強いアドバイザーに相談する。

といったことが有効となります。

いずれにせよ、タワーマンションが相続財産に含まれるようでしたら、税務署は事後に必ず税務調査を行いますし、「行き過ぎた相続税対策」は否認されやすいです。

購入や相続税申告の際には、セカンドオピニオンを取る等して、リスクを低減させることが重要です。

※ アークリッチ税理士事務所は、アークリッチ不動産鑑定士事務所と連携して、相続財産である不動産の「適正な時価」を把握して、適正な相続税の申告をすることによって、上記のような、税務署からの更正処分や過少申告加算税の賦課処分を回避するよう努めております。

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