あなたは大丈夫?相続税を払い過ぎてしまう人の3つの共通点と対策法

今や約10%もの人が支払わなければならない「相続税」。以前は、ごく一部の資産家だけが払う税金というイメージでしたが、平成27年の相続税法の改正により、課税対象者は年々増え続け、平成30年度には全相続約136万件のうち約11.6万件(約8.5%)が相続税の課税対象となり、年間総額で約2.1兆円もの税金が納められました。
そして、最高税率はなんと55%という、なんとも相続人泣かせの相続税ですが、実は、その計算の仕方が複雑であるがゆえに、知らず知らずのうちに多額の相続税を払い過ぎている人が数多く存在しています。
本ページでは、そんな相続税を払い過ぎてしまう不幸な人が少しでも減るように、「相続税を払い過ぎてしまう人の共通点と対策法」について以下の流れに沿って解説していきます。
このページを全て読めば、“相続税を払い過ぎて損をしてしまう”という最悪の事態を回避することができるようになるでしょう。
1. 相続税を払い過ぎてしまう人の3つの共通点
- 相続財産おける土地の割合が大きい
- 税理士にも専門があることを知らない
- 顧問税理士に丸投げにしてしまっている
相続税を払い過ぎてしまう人には上記のような共通点があることが多いです。
もし、あなたが上記のうち2つ以上(特に1.)に該当するようであれば要注意です。
以下、各々順を追って解説していきます。
1-1. 相続財産おける土地の割合が大きい
平成30年12月、東京国税局の発表によると、平成29年度の相続財産の金額の構成比は、土地40.1%(平成28年41.2%)、現金・預貯金等29.6%(平成28年29.4%)、有価証券15.5%(平成28年14.5%)の順となっていました。
年々、土地の比率が下がっていますが、今なお相続財産の40%余りを土地が占めています。したがって、土地の評価額によって相続税額が大きく変動するのです。
すなわち、土地は個性が強く、評価額はその地形等によってそれぞれことなります。
このような路地状敷地(いわゆる「旗竿地」)は、都内でもよく見られます。例えば、この路地が1.5mしか通りに面していない場合の評価額はどうなるでしょうか?
問題は、土地の「相続税法上の評価方法」にあります。(上場)有価証券や現預金といった金融資産は税理士によってその評価額が増減することはほとんどありませんが、土地については個別性が強いため色々な評価方法が定められています。
ただし、土地に限らず、相続税法上の財産の評価の大原則は「時価」です。(相続税法22条)
しかし、実務上は国税庁が定める「財産評価基本通達」によって、いわゆる「路線価方式(または倍率方式)」に各種の補正をおこなって、土地の評価額が算定されています。
その「路線価方式」によって算定された評価額が、「時価」よりも高い場合はどうでしょう? 当然、払わなくて良い税金を払うことになります。
例えば、上記の路地状敷地の評価はどうなるでしょうか?「路線価方式」によると、通りに面した隣地同様路線価に各種の補正によって評価額を算定します。
一方で、不動産鑑定評価による時価を算定する場合は、路地が通りに2m以上面していないので、建築基準法上建物の再築が不可能なことから、土地の評価額はグンと低くなります。
相続税法上、どちらも正しい評価額ですが、「路線価方式」で算定すると、高い相続税を払うこととなります。
実務が優先されて、高い税金を払う。このような例は、実はすくなくないのです。
1-2. 税理士にも専門があることを知らない
「税理士」と聞けば、税務の専門家として、個人の所得税や会社の法人税、そして当然相続税にも精通していると信じていらっしゃる方が大半なのではないのでしょうか?
「モチはモチ屋」と言われる通り、医師と同じように、税理士にも専門分野があります。
例えば「税理士試験」ですが、実は科目合格制で、合格するためには、
となっています。すなわち「相続税法」は、その他の税目となり、「相続税法」を選択しないで税理士合格・登録をしている税理士は少なくありません。
「相続税」を専門としない税理士は、いざ相続税の案件を依頼された場合、前述のような土地の「時価」を意識せず、「路線価方式」が原則であると信じて、そのままで申告書を作成しがちなのです。そして、払わなくて良い税金を払うことになるのです。
1-3. 顧問税理士に丸投げにしてしまっている
特に、個人で事業をされている方や会社を経営されている方は、税理士と顧問契約をされて、月々の経理・会計処理や年度の確定申告を委託されており、イレギュラーな事象が起こったら、まず、顧問税理士に相談されているかと思われます。
当然、自分ないし身内に相続が発生したら、当該顧問税理士に処理を委託されるでしょう。
しかし、顧問税理士の専門は当然「法人税」消費税」「事業税」となります。
多くの顧問税理士は、「相続税」は専門外である場合が多く、過去何件も相続税を扱ったことのあるベテランの税理士であっても、「路線価方式」による申告がほとんどでしょう。(例外は、税務署OBで「資産税(譲渡所得+相続)」専門の税理士でしょう。)
さらに、顧問税理士の思考で多いのは、相続税の申告を誤って、申告後に「過少申告」が発覚するような事態になると、顧問先と税務署双方の信頼を損なうため、保守的に高めの申告をしようとすることです。
意外と思われるかもませんが、顧問先を維持するために、高めの申告をされる税理士はすくなくありません。そして、払わなくて良い税金を払うことになるのです。
2. 相続税を払い過ぎて損をしてしまわない為の対策法
- 相続専門の税理士に依頼する
- 必要に応じてセカンドオピニオンを取る
- 評価に疑義のある土地は不動産鑑定評価を取る
2-1. 相続専門の税理士に依頼する
前述の通り、「モチはモチ屋」です。
「顧問税理士(または、知り合いの税理士)が安く請け負ってくれる」で良いのでしょうか?
相続財産が、現金・預金・(上場)有価証券・生命保険程度でしたら、どの税理士が担当しても、相続税額に差は生じないでしょう。
しかし、相続財産に「土地」等の不動産が含まれている場合はどうでしょう?
「土地」の個別性から、その評価は一律ではないはずです。それを平準化したのが「路線価方式」ですが、当然、限界はあります。
また、相続人や遺贈者が入り組んでいた場合はどうでしょう。
これは、笑い話でもなく、結構多い事例なのですが、「被相続人が愛人用に生命保険に加入しており、愛人がその保険金受取人であった」場合です。
この場合、愛人は法定相続人ではありませんが、相続税の申告上、当該生命保険金は「みなし相続財産」となり、愛人は相続人にもなり、相続税の申告のためには、その愛人の協力が必要となります。さて、どう解決しますか?
このような場合に限らず、相続人の確定や相続財産の確定を確実なものとする場合でも、少しでも不安があるのならば、相続専門の税理士に依頼するのが良いでしょう。
2-2. 必要に応じてセカンドオピニオンを取る
「それでもやはり、先代からお世話になっている顧問税理士先生にまずは相談せざるを得ない」方は多いでしょう。事業承継が絡むとその後のことがありますので当然です。
しかしその場合でも、相続財産に土地が絡む場合や相続人等が複雑な場合で、相続財産や相続税額が多大になる場合、相続税専門の税理士や不動産鑑定士等の専門家からセカンドオピニオンを取ることが、税金の払いすぎを回避し、節税につながると考えたほうがよろしいでしょう。
その場合も、コストの安さに目をつけてはいけません。相手の専門性と信頼性を見極めたうえで依頼するべきです。
2-3. 評価に疑義のある土地は不動産鑑定評価を取る
一般に下記のような土地は、「路線価方式」による評価額の方が。時価よりも高くなりがちです。
- 貸宅地
- 地積規模の大きな宅地(広大地)
- 無道路地
- 私道
- 高低差のある土地
- 極端な不整形地
- 物理的・法的に建築ができない又は制限の大きい土地
- 土壌汚染・地中埋設物のある土地
つまり、近隣と比べ「普通でない土地」です。
このような土地である場合は、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼して、時価を算出して、これを基礎に相続税の申告をするべきです。(不動産屋さんの見積書とは異なりますので、ご注意を)
対象不動産の面積によって、鑑定評価額は異なりますが、鑑定評価書があれば、税務署の信頼を獲得できますし、鑑定評価額と節税額を比べればそれほどのコストとは言えません。
ただし、不動産鑑定士ならば誰でもよいというわけではありません。相続税に強い(税理士と連携している)不動産鑑定士に依頼する方がベターです。そして、事後、税務調査があった場合、当たり前のように立ち会ってくれる鑑定士を選んで下さい。
3. 相続税を払い過ぎたかもと思ったら「還付申告」を検討すべき
国税庁の統計情報によると、相続税の還付税額は平成30年度、18億91百万円に上りました。単純計算すると、相続人1人当たり約300万円の還付実績があったとも言えます。
現金・預金や有価証券等でこれだけの還付があるとは考えられませんから、還付の原因は「土地」と断じても良いかと思います。
近年、「相続税還付」を請け負う業者(主に不動産鑑定士)が増えています。なぜなら、土地の還付申告によって「数百万~数千万円単位」の相続税還付が実現する場合があるからです。
相続税の還付申告は、相続税申告期限(亡くなった日から10ヵ月後)から5年以内でしたら申告が可能です。(国税通則法 第23条、70条等)
「相続税還付」を請け負う業者のほとんどが「成功報酬制」をとっており、還付申告が成功したら、還付額の30~40%を報酬として受け取っているようです。なぜなら、税務署が納得するような緻密な調査に基づいた鑑定評価書の作成・添付が必要なので、すでに提出された相続税申告書の吟味と相続された土地の現地調査や役所調査・市場調査等のうえで、還付が可能か、どれほどの還付額になるのか判定されるからです。
ただし、「相続税の還付申告」は税務署の厳しいチェックがありますので、相続専門の税理士と綿密に連携した不動産鑑定士に依頼するべきでしょう。
4. まとめ
いかかでしたでしょうか。
相続税は、一般的に多額かつ変動幅の大きな税金です。
相続税を払い過ぎて損をしてしまわないように、以下点に留意しながらきちんとした対策・申告を心掛けましょう。
- 土地は個別性が強く、土地の評価方法によって、相続税額が大きく変わってしまう。
- 税理士にも専門分野があり、特に相続財産に土地がある場合、相続税申告は相続専門の税理士に依頼するべき。
- 場合によっては、不動産鑑定士に土地の鑑定評価を依頼する。
- 相続税申告後でも5年以内なら相続税還付が可能な場合がある。
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