不動産鑑定評価とは?査定との違いやメリット・デメリット全解説

不動産鑑定評価という言葉は耳にしたことがあるけど、具体的に不動産鑑定評価とはどのようなものなのか気になっていませんか?

不動産鑑定評価とは、不動産に関する高度な専門知識を持った不動産鑑定士が行う、不動産の適正な経済価値(価格や賃料)についての評価です。

そして、不動産鑑定士が判定した価格や賃料の鑑定評価額は、専門家による客観的な適正価額として、公的にも通用する価額として扱われることから、様々な場面で不動産鑑定評価が活用されています。

このページでは、不動産についての専門知識がない人でも不動産鑑定評価について詳しく理解できるように、以下の流れに沿って分かりやすく解説していきます。

このページをすべて読めば、不動産鑑定評価についての詳細な理解が得られ、自身のニーズに合わせて不動産鑑定評価の活用の検討ができるようになるでしょう。

1. 「不動産鑑定評価」とは?

不動産に関する高度な知識と不動産に関連する法令に幅広く精通する不動産鑑定士が、不動産の適正な経済価値(価格・賃料)を判定することを「不動産鑑定評価」と言います。

不動産鑑定評価によって判定された価格や賃料を「鑑定評価額」と言い、鑑定評価額は「公的に通用するお墨付きを与えられた不動産の価格(賃料)」と言い換えることが出来ます。

不動産鑑定評価は高度な専門性を有する不動産鑑定士にのみ認められた独占業務です。

1-1. 不動産鑑定士とは?

弁護士が法律に最も詳しいプロ、医者が医療に最も詳しいプロであるように、不動産鑑定士は不動産に最も詳しいプロということが出来ます。

「不動産の適正な価格・賃料の判定」とは、不動産鑑定士によって不動産の経済価値が適正に「金額」で表示されることを言い、これを「鑑定評価額」と言います。

不動産鑑定士のみが算出できる鑑定評価額は、法的根拠のある公的に認められる価格として裁判所や税務署等の公的機関でも採用される価格です。

不動産鑑定士の主な役割は、上記の鑑定評価に加え、不動産の「最有効使用」に関するコンサルティングです。

不動産の「最有効使用」に関するコンサルティングとは、例えば駅前の土地には何を建てるのが最適か?収益性が最大になる使用方法は何か?等を判定することを言います。

不動産鑑定士は、「不動産鑑定評価」と「最有効使用」の判定を基に、例えば六本木ヒルズや東京ミッドタウンのような大規模な商業ビル開発やニュータウン開発のような大規模な「街づくり」といったビッグプロジェクトから、公平な遺産分割や損をしない不動産売買のお手伝い、土地活用等の個人の問題に至るまで幅広いコンサルティングを行っています。

※参考:不動産鑑定士についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
三大国家資格・不動産系資格の最高峰と言われる「不動産鑑定士」とは?

1-2. 「鑑定評価額」はなぜ公的に通用するのか?

  1. 「不動産鑑定評価基準」に則って算出された価額であるため
  2. 「不動産鑑定評価基準」を熟知した不動産鑑定士が適正に判定した価額であるため

「不動産鑑定評価基準」は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき制定された、不動産の適正な価格や賃料を判定するための判断根拠となる基準を言います。

この基準は、不動産の経済価値(価格・賃料)の成り立ちから、適正な価格や賃料の判定方法等に至るまで、高度な専門知識がまとめられたものです。

不動産鑑定士は、「不動産鑑定評価基準」及び「不動産の鑑定評価に関する法律」を熟知した不動産に関する高度な専門家であるからこそ、これら基準や法律に則って算出された「鑑定評価額」には公的なお墨付きが与えられ、不動産鑑定士には法的責任が伴うのです。

従って、後述する不動産業者が算出する「査定価格」とは大きく異なるものになります。

1-3. どのように評価しているのか?

不動産価格(賃料)の三面性

  1. 「費用性」:再調達した場合に土地の造成や建物の建設等にどれだけの費用がかかるか
  2. 「市場性」:対象となる不動産が市場でどれだけの価値で取引されているか
  3. 「収益性」:対象となる不動産がどれだけの収益を生み出すものであるか

不動産鑑定評価では、主に上記の3つの観点から不動産の経済価値の評価が行われます。

この価格の三面性とは、一般に人が何かモノを購入しようとする時に、そのモノの価値判断の過程で考慮する三つの要素であると言われています。

例えば、不動産の価格を求める鑑定評価では、これらの三面性をそれぞれ適切に反映する以下のような手法を適用して、専門家である不動産鑑定士が適正な鑑定評価額を判定します。

不動産の価格を求める三手法

  • 費用性 → 積算法
  • 市場性 → 取引事例比較法
  • 収益性 → 収益還元法

また対象とする不動産を求める需要者によって、上記の三面性のうちどれをより重視して評価するかが変わります。

例えば賃貸マンションのような収益物件は、一般に居住用の住宅を求める人ではなく、投資家等が購入者になります。

投資家は収益性を重視してどの賃貸マンションを購入するかを検討するため、鑑定評価も投資家が重視する対象不動産の収益力に特に着目して鑑定評価額の決定が行われます。

2. 不動産業者が行う「査定」との違いとは?

宅地建物取引業者による「査定」と不動産鑑定士による「不動産鑑定評価」の違いを理解するには、「宅建士」と「不動産鑑定士」の違いを理解するとわかりやすいでしょう。

宅建士は不動産の売買や賃貸の仲介の場面で必要な知識に関して特化した専門家と言うことが出来ますが、不動産全般に関して高度な専門知識を有する不動産鑑定士とは大きく異なります。

宅地建物取引士(宅建士)

→売買や賃貸の仲介についての実務家
(不動産売買や賃貸の際の重要事項説明や契約書作成業務を行う)

 

不動産鑑定士

→不動産全般についての高度専門家
(不動産に関する高度な専門知識や不動産を取り巻く幅広い法律に精通する)

不動産系資格である上記2資格の違いは、そもそもの資格取得に必要な勉強時間の違いによっても理解することができます。

不動産系資格で最も知名度の高い「宅建士」はマークシート式(50問)の試験のみであり、標準的な勉強時間は約400時間程度で、合格率は約15%となっています。

一方、高度専門家である不動産鑑定士になるには以下のような険しい道のりを越える必要があります。

  1. 一次試験:マークシート方式(100問)
  2. 二次試験:3日間にわたる論文式試験
  3. 実務修習:1年又は2年コース
  4. 終了考査(三次試験):口頭試問及び筆記試験(短答式+論文式)

いわゆる不動産鑑定士試験と言われる二次試験合格までで必要な勉強時間は約2500〜3000時間以上と言われており、最終合格率はわずか3%程で、合格率を比べるだけでもその難易度が極めて高いことがわかります。

さらに、難関の二次試験合格後に1年〜2年の実務修習をこなし、最終的な終了考査に合格しなければ不動産鑑定士にはなれません。

このように宅建士と不動産鑑定士は試験制度の違いや難易度に始まり、それぞれに認められる業務内容や専門性の幅についても明確に異なるものとなっているため、宅建士を置く不動産業者による査定価格は、公的お墨付きや法的責任のある「鑑定評価額」とは異なり、仲介業者の「意見」と言えるのです。

3. 不動産鑑定評価はどんな時に活用される?

不動産鑑定評価が活用される場面は様々ありますが、主な場面を例示すると以下のようなものがあります。

不動産鑑定評価が活用される場面の例

  1. 公的機関が不動産の売買を行う際の公正価格の評価
  2. 税金計算上の根拠としての不動産の評価
  3. 投資家向けの不動産ファンドの組成のための評価
  4. 金融機関の融資の際の担保評価
  5. 裁判の証拠資料のための不動産の評価

以下それぞれについて解説していきたいと思います。

3-1. 公的機関が不動産の売買を行う際の公正価格の評価

国や都道府県、市町村等の公的機関が不動産の売買を行う際には、税金を使って不動産の購入等が行われます。

そして税金を使う以上、公正妥当な価格で不動産の売買を行わなければなりません。

そのような場合に公的機関は不動産鑑定評価を活用して、売買の規準となる価格を把握した上で取引を行うのです。

3-2. 税金計算上の根拠としての不動産の評価

相続税や固定資産税等の税額算定は、毎年1月1日に国土交通省の土地鑑定委員会が公表する「公示価格」を規準として決定されます。

この公示価格は、不動産鑑定士が毎年全国の基準地の鑑定評価を行い算出されるもので、一般の不動産取引や公的機関が不動産売買を行う際にも規準とされる価格です。

相続税算出の際に用いられる相続税路線価は公示価格の8割程度、固定資産税算出の際の固定資産税評価額は公示価格の7割程度で評価される等、不動産鑑定評価は税金計算上の根拠としても重要な役割を果たしています。

3-3. 投資家向けの不動産ファンドの組成のための評価

ファンドとは投資家から資金を集めて運用し、その収益を出資額に応じて配分する仕組みを言い、不動産ファンドとは不動産投資でこの仕組みを活用したものを言います。

不動産ファンドを運営する会社が投資対象となる不動産を購入する時に、投資家保護の観点から、投資対象の不動産の鑑定評価が義務付けられています。

このように、不動産投資の世界でも鑑定評価は重要な役割を持っています。

3-4. 金融機関の融資の際の担保評価

不動産を担保にし銀行からお金を借り入れる際、借り入れる金額に見合う価値のある不動産かどうかを判定するために、銀行は担保価値の評価を行なった上で貸し出す金額を決定しています。

そこで貸し出す金額が大きい場合や、銀行による担保価値の判定が難しい案件等、重要な局面においては不動産鑑定評価が活用され、適正な担保価値を判定した上で貸し出しが行われています。

3-5. 裁判の証拠資料としての不動産の評価

不動産の売買価格が取引の当事者双方が納得のいく価格ではないために揉めている場合や、不動産の賃料について賃貸人と賃借人で揉めている場合等、不動産の価格や賃料に関して訴訟が起きることが多くあります。

そのような場合に、不動産の適正な価格や賃料の評価である鑑定評価額は、裁判での証拠資料として採用され様々な問題の解決がされています。

4. 不動産鑑定評価の7つのメリット

不動産鑑定評価の7つのメリット

  1. 損をしない不動産売買ができる
  2. 賃料トラブルが解決できる
  3. 不動産の投資価値が判別できる
  4. 公平な遺産分割ができる
  5. 公平な財産分与ができる
  6. 公平な共有不動産の分割ができる
  7. 不相応に高い相続税を圧縮できる可能性

不動産鑑定評価には様々なメリットがありますが、本ページでは上記の7つのメリットについて解説していきたいと思います。

4-1. 損をしない不動産売買ができる

一般的に不動産の売却の際には不動産業者に査定を依頼し、算出された査定価格でそのまま売却してしまうケースが多くあります。

しかしながら不動産業者は売主からの要望に早期に応えること及び回転率を上げるために、査定額を低く見積もる傾向があり、売主は知らない間に損をしている事が多くあります。

このような場合に、不動産鑑定評価によって不動産の適正な価格を把握しておくことで損をしない取引を行うことが出来ます。

4-2. 賃料トラブルが解決できる

地代や家賃は契約で合意した賃料に縛られるため、契約を更新していくにつれ周辺の賃料相場と現行の賃料が乖離する等、賃料改定に関するトラブルが発生することがあります。

このような場合に不動産鑑定評価を活用することで、対象となる不動産の適正な賃料が明確になり、契約当事者の双方が納得できる賃料の決定が出来、賃料改定時のトラブルの回避や解決が出来ます。

4-3. 投資価値のある不動産が判別できる

不動産投資を始める際にどんな不動産に投資をしたら良いかや、既に行なっている不動産投資が適正なものであるか等の疑問は誰もが抱くものでしょう。

このような場合、不動産鑑定評価を活用して適正な不動産の価値を判定してもらうことで、投資価値のある不動産の判別ができるようになります。

ちなみにREIT等の不動産の証券化の際には、投資家保護の観点から証券化される不動産の鑑定評価が法律で義務付けられており、不動産投資の際にも不動産鑑定評価は重要な役割を果たしています。

4-4. 公平な遺産分割ができる

不動産を含む相続財産を分割する際、不動産を相続税評価額に基づいて遺産分割をするケースが多くありますが、これでは公平な遺産分割をすることは出来ません。

なぜなら相続税評価額は時価の約8割程度の評価となるため、例えば相続人2人で現金1億円と相続税評価額1億円の不動産をそれぞれ相続した場合、不動産を相続した人は現金で言うと約1億2500万円を相続したことになってしまい公平な遺産分割とはなりません。

このような場合も、分割の対象となる不動産に関して鑑定評価を活用することで、分割対象の不動産の適正な価格を把握することが出来、公平な遺産分割を行うことが出来ます。

4-5. 公平な財産分与ができる

離婚の際に夫婦間で財産分与について揉めている場合、不動産鑑定評価を活用することで適正な財産価値を把握することが出来、公平な財産分与が可能となるためトラブルの早期解決が出来ます。

4-6. 公平な共有不動産の分割ができる

親族間で不動産を共同で所有している等の場合、相続の発生や財産の整理等の場面で共有者間で分割に関して揉める場合があります。

このような場合、不動産鑑定評価を活用することで不動産の適正な価値を把握出来るため、公平な分割を行うことが出来ます。

4-7. 不相応に高い相続税を圧縮できる可能性

相続税の金額は路線価を基に画一的な方法で決定されるため、例えば路地状敷地だったり、極端に間口が狭く建物の建築が出来ない土地、不整形で用途が限られてしまう土地等であっても、そういった不利な条件が評価額に十分に反映されず相続税が不相応に高く算出されてしまう場合があります。

このような場合に不動産鑑定評価を活用することで、相続税評価額が圧縮され適正な相続税額まで減額できる可能性があります。

事例として、鑑定評価を行うことで相続税評価額約3億2000万円→約2億円へ1億円以上も圧縮され、税額にして約6500万円もの相続税を軽減できたケースもあるほどです。

5. 不動産鑑定評価の2つのデメリット

不動産鑑定評価の2つのデメリット

  1. 「時間」がかかる
  2. 「費用」がかかる

以下それぞれについて解説していきます。

5-1. 「時間」がかかる

不動産鑑定評価は、不動産鑑定士による対象となる不動産に関するヒアリング、現地確認、関係法令等の詳細な調査、市場の分析、鑑定評価額の算出、法的根拠のあるものであることを表示する「鑑定評価書」の作成等、一定の手順が必要となります。

このように「不動産の鑑定評価に関する法律」及び「不動産鑑定評価基準」に則り不動産鑑定士が様々な調査や分析を行うため、相応の時間が必要となります。

不動産鑑定評価に要する時間は、不動産の種類や依頼内容によってまちまちですが、おおよその目安として約2週間程度の期間を見ておくと良いでしょう。

しかし、内部資料として使うだけで鑑定評価書までは必要でないという場合には、より短い期間でできる「簡易鑑定」を行なっている業者もあるため、気になることがある場合はまず不動産鑑定業者の簡易鑑定を利用してみると良いでしょう。

5-2. 「費用」がかかる

上記の通り不動産鑑定評価は、不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」及び「不動産鑑定評価基準」に則り様々な調査・分析を行い、公的お墨付きと法的責任を伴うものであるため、次章でも記載の通り不動産鑑定評価には概ね数十万単位の費用がかかります。

しかしながら、不動産は高額なため取引に際しては数百万から、規模の大きい物件に関しては数千万単位で大損をしてしまうリスクも伴います。

このような場合に不動産鑑定評価を活用することで、数十万円の費用で損をしない取引が出来たり、前述のような不動産に関する問題解決が出来るのであれば、考え方によっては決してデメリットと言うことは出来ないかもしれません。

6. 不動産鑑定評価にはどのくらいの費用がかかる?

不動産鑑定評価に要する費用は案件の内容にもよりますが、公的機関が鑑定評価を依頼する際に目安とされている不動産鑑定報酬基準に基づくとおおよそ上記の金額になります。

鑑定評価報酬は、対象となる不動産の種類と鑑定評価額を基に、対象不動産が遠方のため現地調査に手間がかかる場合や権利関係が非常に複雑な場合である等、各案件ごとの内容を加味して決定されます。

あくまで不動産鑑定報酬基準で考えた場合ですが、鑑定評価額5000万円未満なら評価額の約1%程度、鑑定評価額5000万円〜1億円でも評価額の約1%〜約0.8%と、報酬額の割合は非常に低く、それで安心が買えるのであれば決して高い費用とは言えないかもしれません。

※参考:不動産鑑定評価の費用についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
不動産鑑定士に鑑定評価を頼むと幾らかかる?目安費用から安く抑える方法まで全解説

7. まとめ

いかがでしたでしょうか?

不動産鑑定評価についてや、不動産鑑定評価を活用するメリット等をご理解頂けたのではないかと思います。

そして「査定」と「不動産鑑定評価」は似て非なるものであり、それぞれを上手く使い分けることが肝心です。

本ページでご紹介してきた通り、不動産に関する様々な問題については、不動産に最も詳しい高度な専門家である不動産鑑定士の鑑定評価を活用することが最良の解決への近道となると言えます。

不動産に関する悩みや問題がある場合は、小さなことでもまず不動産鑑定士に相談してみるとよいでしょう。

弊社では、多数の不動産鑑定士とパートナーシップを組み、様々な問題解決のお手伝いをしておりますので、不動産鑑定士への相談をご希望の方は、無料相談(こちら)よりお問い合わせ下さい。

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