路線価とは?税理士・不動産鑑定士が教える路線価の見方・使い方

新聞やニュース等で、「銀座の○○の地価が全国一!」「東京の商業地の土地の価格が〇%下落」等、時々報道されています。
そうした報道の中で、「路線価」という言葉もしばしば耳にされるのではないでしょうか?
そんな中で、“「路線価」って一体何なの?”、“「時価」とはどう違うの?”といったような疑問を抱いている方も多いと思います。
このページでは、土地の価格の中でも、主に「路線価」に焦点を当て、以下の流れで解説していきます。
このページを全て読めば、「路線価」についての理解が深まり、路線価を使った土地の相場見立てができるようになるでしょう。
1. 「路線価」とは ~土地の価格の種類~
簡単に言うと「路線価」とは、ある道路(路線)に付された1㎡あたりの「土地の単価」です。
したがって、路線価が付された道路に面した土地の評価額は「路線価」で計算することができるのです。また、同じ道路(路線)に面した土地の単価は基本的に同じとなります。
「路線価」は、「相続税路線価」とも呼ばれ、主に相続税(贈与税)の計算に使われ、相続(贈与)された土地は、その土地が面している道路に付されている「路線価」に土地の面積を乗じてその土地の評価額を算定しています。
「路線価」は公的な土地の単価の一つです。
公的機関が調査・公表する「土地の単価」は路線価だけではなく、各種ありますが、簡単にその関係をまとめると以下の通りになります。
「公示価格」と「基準地価」は、ある1地点について不動産鑑定士による鑑定評価に基づいて決定されます。公示地価は全国26,000地点、基準地価も全国21,519地点が調査され、それぞれの地点の調査時点における「時価」が公表されています。
「路線価(相続税路線価)」は、国税庁によって公表されており、公示価格の調査地点が2万か所程度なのに対し、路線価の調査地点は数十万と非常に多いのも特徴といえます。また、路線価の目安は、地価公示価格の8割の額とされています。
路線価は、地価公示価格や売買の実例価額、そして不動産鑑定士などの専門家による鑑定評価価額、精通者の意見価格などをもとに決まります。
ちょっと混乱しがちなのは「固定資産税評価額」で、こちらも道路に付随して価格が定められているため、「固定資産税路線価」と呼ばれたりします。市町村(東京都の場合は都)が土地に関する固定資産税等を算出する際に用いるもので、目安は、地価公示価格の7割の額とされています。
2.路線価は、どのような場合に必要?
では、「路線価」はどのような場合(何をするとき)に必要なのでしょう。
実務では「路線価」は様々な場面で活用されていますが、主に以下のような場面で重要になってきます。
- 相続税・贈与税額の計算
- 土地取引の参考
以下、それぞれ解説していきます。
2-1.相続税・贈与税額の計算
相続(贈与)された財産のなかに土地が含まれていた場合、原則、当該土地の「時価」を評価して、他の相続財産に加えて、税率を乗じて納めるべき税金の額を算出することとなっています。(相続税法22条)
本来、土地の「時価」の算定をする場合は、不動産鑑定士に依頼することとなります。
しかし、それでは土地を相続したすべての方に常に費用がかかり、時価を算定した後に計算してみたら実は相続税を納めなくともよかったと判明する場合もあります。また、基本的に税理士は不動産に詳しくないために、土地の時価を判定できないため、相続税の概算でさえも算定できません。
そこで、税理士でも簡便に土地の評価ができるように、税務署が主に市街地の道路(路線)ごとに「路線価」を定めているのです。
路線価は宅地(建物の敷地として用いている土地)にかかる相続税や贈与税を計算するときに時価評価に替えて使用されるのです。路線価を使用して宅地を評価する方法を「路線価方式」と呼び、市街地にある宅地を路線価方式で簡便に評価することができるのです。(財産評価基本通達)
2-2. 土地取引の参考
実は、「路線価」は、皆様が土地を買う場合や売る場合の参考にもなるのです。
勿論、不動産業者も土地を売買する場合に参考にしていますし、不動産鑑定士が土地の時価を評価する場合も路線価を参考にしています。
なぜなら、上述の通り、路線価の算定には不動産鑑定士も関与しているし、実際の過去の取引実績も加味されているからなのです。
したがって、土地の売買を検討しているエリア付近に公示価格の調査地がない場合でも、路線価をチェックすることでおおよその土地の市場価格が推測できます。
上述の通り、「路線価は地価公示価格の8割を目安」に決定されています。したがって、ある土地を買う場合、その売り出し価格が「路線価÷0.8」と比べると割高なのか割安なのかの指標になります。
3.路線価の調べ方と見方
では、実際に「路線価」を調べてみましょう。
「路線価」はインターネット上で公表されていますので、どなたでも調べることができます。いくつかの方法をご紹介します。
3-1. 国税局や国税事務所、税務署で調べる
インターネットが普及する前は最寄りの税務署に行って、「路線価図」を見せてもらい確認していました。
今はインターネットでどなたでも「路線価図」を閲覧することができます。
3-2.国税庁のホームページで調べる
こちらが、正式な「路線価図」となり、信頼おけますが、国税庁ホームページの路線価の調べ方は、
- とにかく操作手順が多く、面倒くさい
- 路線価図が同じ町内(○○丁目)にいくつもある場合は、1枚ずつ確認しなければならない
- 土地勘のない場所や近くに目印となるような施設がない場所だと、住宅地図と見比べる必要がある
- とにかく見づらい。目的地が見つかっても拡大の必要がある。
などで、おすすめできません。
したがって、こちらでは検索手順等は詳しく解説致しません。
3-3.「全国地価マップ」で調べる (おススメ)
もっと簡単に路線価を調べる方法として、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」をおすすめします。こちらは先に紹介した方法よりも簡単に、かつ見やすく路線価を調べることができます。
こちらは、上述の4つの公的機関の土地の単価を調べることができますし、住所や施設名を入力して簡単に検索することができます。
だたし、こちらは公式なものではありませんので、実際の相続税申告に利用する場合等では必ず国税庁の路線価図で再度路線価を確認するべきです。また、国税庁の路線価図がわかりにくくて使っていないという税理士は、相続税の手続きに慣れていないと推測され、まず信頼できないと言って良いでしょう。
4.路線価を使った土地の評価方法
それでは、例として、東京都杉並区永福4丁目25−7「杉並区立永福図書館」の路線価を調べてみます。
4-1.路線価図の見方
国税庁の路線価図では、下記のように表示されています。
ここまでだどりつくのは大変ですが、永福図書館が面する道路には「460C」と表示されています。
アルファベットCの意味は後述しますが、「杉並区立永福図書館」の路線価は、460千円/㎡であるという意味です。
さて、同様に「全国地価マップ」を使って「杉並区立永福図書館」を検索してみます。
住所の「東京都杉並区永福4丁目25−7」を入力しますと、下記のようになり、上記の国税庁の路線価図と同様に路線価は、「460C」と表示されます。
このようにすれば、皆様のお住まいの土地や調べたい土地の路線価が検索できます。
この「路線価」は、平方メートル当たりの単価ですので、こちらに面積を乗ずれば土地の評価額がわかるのです。
つまり、永福図書館の土地を相続した場合、その評価額は2億3千万円となり、他の相続財産と合算して、税率を掛けると相続税額が算出されるという仕組みです。
4-2.路線価の見方 ~借地割合~
例えば、上述の「杉並区立永福図書館」について、国税庁の「路線価図」でも「全国地価マップ」でも「460C」と記載されていました。
この路線価は460千円/㎡になることはすでに解説致しました。
末尾のアルファベット「C」の意味ですが、「借地割合」を示します。
例えば、この土地を相続したのだけれども他人から借りている土地(借地)であった場合は、下表の通り借地割合70%を路線価に掛けたものが評価額となります。
逆に、相続した土地が他人に貸している土地(底地)の場合の評価は、100%-70%=30%と計算されます。
5.路線価と相続税の関係
これまで説明してきました通り、「路線価」は、相続税(贈与税)の納税額を算定する場合に、「土地」の評価額を簡便に算出するために税務署(国税庁)が決め公表されている「土地の単価」です。
すなわち、「この価格で売れる」という時価とは異なるものであることに十分ご注意下さい。
ここでは、土地が相続財産に含まれた場合の相続税の計算方法をご説明致します。
5-1.相続税(贈与税)の計算方法
下記の簡単な例を題材に、相続税の計算方法をご紹介します。
イメージは、子供がいない賃貸住宅住まいの老夫婦で、夫が亡くなった場合で、自宅はないものの図書館の存する土地を杉並区に貸していたと仮定します。
まずは、相続税法上の各財産の評価を行います。
① 現金預金の評価は、正にその額です。預金は、亡くなった方(被相続人)の亡くなった日の残高となります。
② 土地は、前述の「土地を貸している人からの相続」になりますので、6千9百万円になります。
③ 家財道具一式は、自動車や貴金属・骨董等がなければ、実務上は『5万円~30万円』程度を計上するのが一般的です。ここでは、二人住まいで、豪華な賃貸住宅ではないという仮定で10万円と評価するとします。
相続額は、①~③合計2090+6900+10=9000で「9千万円」となります。
こちらに、本当は、基礎控除や配偶者控除を引いて、税率を掛けて納税額を算出するのですが、ここでは、税率だけを紹介します。
相続税も所得税と同様に「累進課税」となっています。
上の例で、仮にに9千万円が課税対象額だとすると、
納税すべき相続税額は、9000万円×30%-700万円=2000で「2千万円」となります。
このように「路線価」は、相続税(贈与税)の計算の一部、土地の評価のために用いられるのですが、やはり、何となくですけど税の計算って面倒くさそうですよね?
だから税理士がいるのですが...
5-2.実は単純ではない土地の評価
「路線価」さえわかれば土地の評価は簡便にできるのでしょうか?
実は、路線価が判明しても、すべての土地が単純に「路線価×面積」で求められるわけではありません。
世の中にはいろいろな形態の土地が存在しますので、国税庁は財産評価基本通達で、
- 宅地の奥行が短い・長い土地には、「奥行価格補正」
- 宅地がいびつな形状をしている土地には、「不整形地補正」
- 用途に対しての間口が狭い土地には、「間口狭小補正」
等、各種の補正(修正計算)を規定しています。
また、角地等2本・3本の道路に面した土地にも独特な計算式が規定されています。
さらに、すべての道路に路線価がきめられているわけではありません。路線価は主に市街地の宅地が対象となっており、郊外の宅地や山林、農地には路線価がつけられていないことが多いです。
路線価がない土地の価格は、市区町村が決める固定資産税の課税の基準である「固定資産税評価額」をもとに計算します。こちらには、「評価倍率表」というものが用意されており、これをもとにした土地の評価方法を「倍率方式」といいます。
「路線価方式」は、「簡便な土地の評価方法」であるはずなのですが、土地は個別性が強いため、かなり複雑な計算となります。
したがって、税理士等の専門家に頼らず、個人で相続税・贈与税の申告する場合、相続税を払い過ぎてしまう場合があります。逆に、計算ミスで過少申告すると、後の税務調査等で追徴されるだけでなく、加算税を課せられる場合もあるのです。
5-3.路線価がすべてではない
「2-1.相続税・贈与税額の計算」にて、税理士でも簡便に土地の評価ができるように、税務署が主に市街地の道路(路線)ごとに「路線価」を定めている(財産評価基本通達)と説明致しました。
一方で、相続(贈与)された財産のなかに土地が含まれていた場合、原則、当該土地の「時価」を評価して、他の相続財産に加えて、税率を乗じて納めるべき税金の額を算出することとなっている(相続税法22条)とも説明致しております。
すなわち、相続税法上の土地の評価額の基本は「時価評価」で、簡便的に通達により「路線価方式」で評価する、というのが本来の姿です。
では、ある土地の評価額で、「時価<路線価」だったら、どちらで評価するべきでしょうか?
納税者の立場からすると、「時価」が基本で、「路線価方式」より「時価」が安いのならば、「時価」で税額を算出した方が良いに決まってますよね?
いくら税務署が計算式を用意しているからと言っても、誰も買わない(=市場で売れない)土地に無理矢理計算式をあてはめられて税額を算定されてもたまったものではありません。
このような時価評価の方が低くなる土地とは、「特徴のある土地」です。例えば、道路に全く面していない土地、土壌汚染がある土地、いびつな形状の土地、斜面にある土地、等々です。世の中、平坦で正確に長方形な土地なんてそう多くありあせん。
また、「1.路線価とは」でも説明しましたが、路線価はある年の1月1日を調査時点として7月1日に公表され、翌年の6月30日まで有効です。
すなわち、ある方が令和3年の6月にお亡くなりになったとしても、令和2年1月1日の調査を元に決定された路線価を使うこととなります。その1年半の間に土地の時価が暴落していたら...
ただ、世の中には相続税専門ではなく路線価方式の細かい計算に慣れていない税理士が少なくないばかりではなく、上記のような時価評価した方が評価額が低くなることを知らない税理士が多数いるため、相続税を払い過ぎているケースが多々あるのです。
相続財産の中で、ちょっと特徴のある土地が含まれているかな、と思ったら不動産鑑定士と提携している相続専門の税理士に相談することをおススメ致します。
6.まとめ
いかかでしたでしょうか。
「路線価」は、相続税の計算の基本とも言え、不動産取引の様々な場面でも参考にされている客観的な指標の一つと言えます。
不動産をお持ちの方は「路線価」を調べて、色々と検討してみるものよいでしょう。
- 「路線価」は、税務署(国税庁)が決め、公表されている路線(道路)ごとに付されている「土地の単価」
- 「路線価」は、相続税(贈与税)の納税額を算定する場合に、「土地」の評価額を簡便に算出するため決められている
- 「路線価」は、公表されており、誰でも閲覧できる。
- 「路線価」によって、土地の評価額が簡便に算出でき、相続税の計算ができる。
- ただし、相続財産に「特徴のある土地」が含まれている場合、「路線価方式」の計算では相続税の払いすぎになる可能性が高い。
- 「特徴的ある土地」がある場合は、不動産鑑定士と連携した相続専門の税理士に相談するべき。
なお、すでに相続税の申告を済まされた方でも、相続税を払過ぎてしまったかも⁉︎”と思った場合には、相続から5年10ヵ月以内であれば還付を受けられる可能性がありますので、まずは専門の税理士や不動産鑑定士に相談してみましょう。
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